

最近、相続した土地を国に引き取ってもらう制度について、あるお客様からこんな切実な「迷い」を打ち明けられました。
お客様からのご相談
「最初は、テレビやネットで見かける『全国展開の大きな事務所』に相談しました。
実績も多いし、全国に提携している測量士(土地家屋調査士)さんがいるから、どこでも対応できると言われて、安心だと思ったんです。
でも、話を進めるうちに、ふと不安になりました。
窓口の担当者はとても丁寧ですが、私の土地に実際に行くのは、その担当者でも代表の先生でもなく、会ったこともない現地の提携業者さんだというのです。
一生に一度の、隣近所との関係も絡むデリケートな土地の問題なのに、『書類を作る人』と『現場を歩く人』がバラバラで、本当に最後まで親身になってくれるのかな……。
そこに温度差を感じて、結局『先生本人が必ず現場に行く』というスタイルの事務所を改めて探しました。」
このようなお話は、実は珍しくありません。
私たちが「エリアを絞り、代表自ら現場へ行く」理由
全国規模の大きな事務所には、
効率よく手続きを進めるための仕組みが整っています。
まずは気軽に相談できる入り口として、とても便利な存在だと思います。
一方で、私たちが
あえて対応エリアを限定しているのには理由があります。
①「人任せ」にできない現場判断
相続土地国庫帰属制度は、書類だけで完結する制度ではありません。
最終的には
・土地の状態
・周辺環境
・境界状況
・管理状態
など、現場の状況をもとに総合的に判断されます。
そのため、
・書類を作る人
・現地を見た人
が別々だと、土地の状況が正確に伝わらないことがあります。
私たちは、
書類を作る本人が現場に立つことを大切にしています。
② 地域との関係も大切な仕事
土地の問題は、法律だけでなく
・隣地の方
・地域の方
・自治会
など、人との関係も大きく関わってきます。
特に代々続いてきた土地の場合、
「土地を手放す」と突然言われると
周囲の方が不安に感じることもあります。
だからこそ私たちは、
地域の方々にも丁寧に説明しながら
納得感のある形で進めることを大切にしています。
③ 「申請したら終わり」ではない制度
相続土地国庫帰属制度は、
申請して終わりという制度ではありません。
申請後には
・法務局とのやり取り
・現地確認
・補足資料の提出
・周辺状況の確認
など、さまざまな対応が必要になります。
審査期間も、一般的には
1年程度かかることが多い制度です。
さらに、もし万が一 不承認となった場合でも、
それで終わりというわけではありません。
制度上は 再チャレンジ(再申請)することも可能です。
ただしその場合
・地中に残った有体物の撤去
・擁壁の補強
・越境している樹木の伐採
など、土地の状態を改善するための対応を求められることがあります。
ここで重要なのは
「どこまで対応すれば制度上足りるのか」
という判断です。
法務局の担当者は法律の専門家ではありますが、
必ずしも土木工事の専門家ではありません。
そのため、安全側に配慮して
「完璧な工事」を求められることもあります。
しかし実際には、制度上必要な範囲を超えると
工事費用が大きく膨らんでしまうことがあります。
私たちはそのような場合、
専門業者と一緒に現地を確認しながら
・制度上必要な範囲
・過剰な工事になっていないか
を整理し、必要最低限の対応で済むよう調整しながら進めます。
実際にあった事例
以前、関西にお住まいの方から、対応エリア内の土地についてご相談をいただきました。
その土地は斜面にあり、審査の段階で
土砂災害のリスクが懸念され、一度不承認となりました。
しかし制度上は、
その理由となった問題を解消すれば 再申請することが可能です。
そこで現地を再度確認し、専門業者と相談しながら
・どこまで補強すれば制度上足りるのか
・過剰な工事にならないか
を検討しました。
その結果、
必要最低限の擁壁補強工事を行い、再申請を行ったところ、
最終的に国の承認を得ることができました。
最後に
相続土地国庫帰属制度は
・効率よく手続きを進める方法
・現場に寄り添って進める方法
どちらも選択肢として存在します。
ただもし
・自分の土地の状況をしっかり見てほしい
・隣地との関係も含めて丁寧に進めたい
・最後まで責任を持って伴走してほしい
そう感じられるのであれば、
「誰が、どの覚悟でその土地に立つのか」
という視点で専門家を選ぶことも、
一つの大切な判断基準になると思います。
なお、当事務所では
相続土地国庫帰属制度のご相談については
原則として代表である私自身が現地を確認したうえで判断しています。
制度の承認可否は、書類だけでなく
現地の状況が大きく影響する制度だからです。
そのため対応エリアは限定しておりますが、
その分
現場の状況を自分の目で確認しながら
承認まで責任を持って伴走すること
を大切にしています。