

相続土地国庫帰属制度のご相談で、
多くの方が悩まれるのが「有体物」の扱いです。
「撤去しないといけないのか」
「どこまでやれば申請できるのか」
制度上は「有体物が残っていると不承認」と読めるため、
判断に迷われるのも無理はありません。
■ 実地調査で見えた判断の実態
本日、法務局の実地調査に同行してきました。
申請から約5か月。
事前に地表の状況を確認できるよう求められ、
申請者様と打合せのうえ伐採を行い、準備を整えました。
当日は法務局の審査官に加え、
引取り予定の財務局担当者も現地を確認しました。
なお、建物については、
制度上、存在していると却下事由となるため、最終的には撤去が必要となります。
ただし実務では、
→承認の見込みがあると判断された後に解体する
という流れで進められることが一般的です。
先に解体してしまうのではなく、
まずは「通る見込みがあるか」を見極めることが重要になります。
■ 現地での具体的な判断事例
今回、現地でポイントとなったのは、
地中にあるマンホールと水道管です。
マンホールは原則として有体物に該当し、
通常は撤去対象と考えられます。
ただし今回は、
・地中に存在している
・地盤的に基礎のような役割を持っている
といった事情がありました。
そのうえで、実際にマンホールのふたを開けて確認したところ、
内部は乾燥しており、水の流入も見られませんでした。
このことから、
→申請地内でのみ使用されている設備であると判断されました。
その結果、
承認見込みがあると判断された場合には、
撤去せず残す方向で整理できる可能性がある、
との見解が示されました。
一方、水道管についてはその場で結論を出さず、
・他の土地への接続の有無
・実際の利用状況
を確認する必要があるため、
解体業者に調査を依頼することになりました。
このように現場では、
「すぐ判断できるもの」と「確認が必要なもの」が混在します。
■ 有体物の判断基準
では、有体物はどのように考えればよいのでしょうか。
判断の軸はシンプルで、
・誰が使っているのか
・地表に影響があるか
・将来の管理に支障があるか
この3点に集約されます。
国が見ているのは、
「その土地を引き取った後、安定して管理できるかどうか」です。
制度の説明だけを見ると
「有体物=不承認」と受け取られがちですが、
実務では、
・利用状況
・周辺への影響
・管理のしやすさ
を踏まえて、個別に判断されています。
■ 判断で最も重要なこと
重要なのは、すべてを撤去することではありません。
どこまで整理すれば、承認の可能性があるのか。
その見極めこそが、この制度の本質です。
今回の水道管のように、
すぐに結論を出せないものもあります。
その場合は無理に判断せず、
「何を確認すれば判断できるか」を整理する。
この積み重ねが、無駄な費用やリスクを防ぎます。
この制度において専門家に求められるのは、
作業ではなく、判断と設計です。
現地を確認し、
進めるべきかどうか
どこに費用をかけるべきか
どこまで整理すればよいか
を見極めることが重要になります。
有体物の判断は一見シンプルですが、
実際には現地状況によって大きく変わります。
だからこそ、
「全部撤去する」
「とりあえず申請する」
といった判断ではなく、
適切なプロセスを踏むことが必要です。
今回の実地調査で得た知見も踏まえ、
今後のご相談に活かしていきたいと考えています。