

先日、相続土地国庫帰属制度について、次のようなご相談を受けました。
「制度を調べて、境界確定測量までは必要ないことは理解しています。
お隣の方とも話し合い、境界はここでいいですよね、ということで一度は合意できました。
ところが途中で
『やっぱり専門家を入れて確認してほしい』
と言われてしまいました。
これはどういうことなのでしょうか?」
実は、このような相談は決して珍しくありません。
背景には「筆界」と「所有権境界」の違いがあります。
合意した境界が「間違い」とは限りません
まずお伝えしたいのは、
当事者同士で話し合い、現地を確認し、納得して決めた境界そのものが
悪いわけではないということです。
トラブルを避けたい、円満に進めたいという判断は、
とても自然で誠実なものです。
たとえ話で考える「筆界」と「所有権境界」
所有権境界は、
隣同士で交わした口約束のようなものです。
当事者が納得していれば成立し、日常生活では十分な場面も多くあります。
一方、筆界は、
第三者にも通用する公的な契約書のようなものです。
登記などの資料を基にし、行政の判断にも耐えられる基準になります。
どちらが正しいという話ではなく、
役割が違うと考えると分かりやすいと思います。
相続土地国庫帰属制度で重要になる視点
相続土地国庫帰属制度では、
申請の相手は「国(行政)」です。
そのため、
お隣が納得しているかどうか
だけでなく
その合意内容が、申請書類の中で
行政が判断できる形になっているか
が実務上のポイントになります。
ここで重要になる「整合性」
相続土地国庫帰属制度では、
当事者同士が合意した所有権境界であっても、
その位置が、もともとの筆界と
整合性が取れているかどうか
が重要になります。
ここでいう「整合性」とは、
大きく食い違っていないか、無理のない位置関係にあるか、
という意味です。
制度上、新しく境界を決め直すのではなく、
既存の土地の状態を前提に申請が進められるためです。
なぜ途中で不安が出てくるのか
最初は納得していても、
国が相手の制度であること
後で問題にならないかという心配
から、「専門家に確認してほしい」と感じることはよくあります。
この不安の正体は、
合意そのものではなく、
その合意が筆界と整合性の取れた内容になっているか
という点にあります。
まとめ
所有権境界は柔軟で現実的な方法
筆界は説明力のある公的な基準
どちらが正しい、という話ではありません
相続土地国庫帰属制度では、
合意した内容が、
もともとの筆界と整合性の取れたものになっているか
という視点が、結果を左右することがあります。
途中で止まってしまうのが一番もったいないため、
最初の段階で「最後まで進める設計」になっているかが重要です。
※個別の事情によって判断は異なります。
初回相談では、こうした「途中で止まりやすいポイント」も含めて整理しています。