相続土地国庫帰属制度は、相続によって取得した不要な土地を国に帰属させることで、所有者不明土地の増加を抑制することを目的とした制度です。この制度の申請主体は、相続等により土地所有権を取得した個人に限定されています。
この制度の導入にあたっては、当初、所有者不明土地の発生原因は、相続などに限られないことから、申請主体を「相続等により土地所有権を取得した個人」に限定するかどうかが議論されました。
しかし、相続によって土地を望まずに取得した所有者について、その負担感から土地を手放したいと考える者が、相応の割合に達していることが、所有者不明土地を発生させる要因となり、土地の管理不全化を招いていると考えられています。
そこで、相続という自らがコントロールすることができない事情を契機として望まない土地を取得した者については、一定の限度で所有者としての責任を免れる道を開く必要がありました。
一方で、土地所有権の国庫帰属を広く認めてしまうと、土地の所有に伴う管理コストが国に転嫁されるとともに、将来的に土地の所有権を国庫に帰属させる意図の下で所有者がその土地を適切に管理しなくなるというモラルハザードが発生するおそれがあります。
このような観点から、相続土地国庫帰属制度については、利用見込みや国の財政負担への懸念を背景に、申請主体は相続等により土地所有権を取得した個人に限定されることになりました。
この背景をまとめますと、以下の3つの理由が考えられます。
1,相続によって土地を望まずに取得した所有者に対する配慮
2,土地の所有に伴う管理コストの転嫁防止
3,相続土地国庫帰属制度の管理コストへの懸念
この制度は、相続によって土地を取得した所有者の負担を軽減し、所有者不明土地の増加を抑制する効果が期待されています。しかし、制度の運用や財政負担への懸念も指摘されています。今後の制度運営においては、これらの課題をどのように解決していくかが重要になると考えられます。
参考文献等 法務省HP、相続土地国庫帰属制度承認申請の手引(横山宗祐編著 新日本法規)
イラストは政府広報オンラインより引用