こんにちは。
今回は、当事務所が支援させていただいた「相続土地国庫帰属制度」による承認事例をご紹介します。
■ 相談のきっかけは「もう手放したい」
福岡県内のある山あいの土地。
申請されたのは、80代の男性・M様でした。
昭和50年代、M様の父親がいわゆる「原野商法」で購入した土地で、当初は別荘を建てる予定だったそうです。
しかし、旗竿地で車も入れず、若い頃に少し畑として使っただけで放置。
その後は不法投棄され、草刈りにも毎年20万円ほどかかる状態に。
8年前には売却を目指して当方で現況測量を行いましたが、買い手は見つからず……。
そんな中、令和5年にこの制度が始まり、「手放せるなら申請したい」と再び相談を受けました。
■ 審査は時間がかかるが、道はある
この制度では、申請から承認までに1年~2年かかるケースも多く、現在も複数の案件を支援中ですが、徐々に承認事例も増えてきています。
今回は、法務局への事前相談で「現地を整備すれば申請可能」との感触を得られたため、伐採・小屋撤去・不法投棄の処理などを実施。
また、M様の「絶対に通したい」という強い希望もあり、隣接地との境界確定測量も行いました。
近隣住民の方にも立ち会っていただき、協力的な姿勢が非常にありがたかったです。
■ 簡易擁壁でも“安全圏内”と判断される
現地調査には法務局と財務省の担当者が同行。
一部に土嚢を積み上げてモルタルを塗った簡易擁壁があり、「倒壊のリスク」として懸念されるかもしれない部分もありました。
しかし、災害リスクや過分な維持費の懸念はないと判断され、無事に承認へと進みました。
これは、「資料を整え、現地を清掃し、境界を明示する」といった誠実な準備が審査官にも伝わった結果だと感じています。
■「売れない土地」でも、つながる希望がある
今回のケースは、「売れない・使えない・でも費用だけかかる土地」を抱えて悩んでいた方にとって、大きな希望になると思います。
もちろん、制度の活用には費用も手間もかかりますが、正しく準備すれば道は開けるという好例です。
ご自身だけで悩まず、地域の専門職や近隣住民とつながることで、解決できる可能性は高まります。
「これ、うちの話かもしれない…」と思われた方は、ぜひ一度ご相談ください。