「去年の夏に申請したのに、まだ結果が届かないんです。審査にはあとどれくらい時間がかかるのでしょうか?」
これは、90代のK様(神奈川県在住)のご家族から寄せられた切実なご相談です。同じように、相続土地国庫帰属制度を申請したものの、結果が出るまでの時間の長さに不安や不満を感じている方は少なくありません。
このブログでは、相続土地国庫帰属制度の「待つ時間」について、実際の事例を交えながら、その実態と心構えをわかりやすくお伝えします。
【なぜこんなに時間がかかるの? 制度の仕組みと現実】
K様のご家族は、福岡にある相続した土地の処分に悩んでいました。「遠方の土地を管理するのは難しい」「できるだけ早く手放したい」という思いから、この制度の利用を決断。当方で申請準備をすべて行い、昨年夏ごろに申請を行いましたが、すでに10か月以上が経過しても、いまだ結果は届いていません。
ご家族の心配を受け、私の方で福岡法務局の国庫帰属審査室に確認したところ、次のような説明がありました。
「現在、申請件数が非常に多く、ほとんどの案件で1年〜2年程度かかっています。関係機関との調整、現地調査、補正のやり取りなども必要なため、どうしても時間を要してしまいます」
つまり、K様のケースは決して「遅れている」わけではなく、現在の制度における通常の進行状況なのです。これは、申請者にとっては驚くべき事実かもしれません。
【「音沙汰がない」からこそ不安になる気持ち、よくわかります】
この制度では、審査が進んでいても、特に連絡がない期間が長く続くことがあります。補正の連絡や現地調査がある場合を除き、法務局から通知が来ることはほとんどありません。
ご自身で申請された場合、書類の不備や確認事項が多く、法務局から頻繁に補正や質問の連絡が入ることもあります。一方で、専門家に依頼した場合は、事前の調査や申請書類が的確に作成されていることが多いため、余計な確認作業が少なく、かえって音沙汰がない期間が長く続く傾向にあります。
そのため、申請された方は「本当に審査が進んでいるのか?」「自分の申請だけ忘れられているのでは?」といった不安を抱えがちです。しかし、実はこうした「音沙汰のない時間」こそが、制度が着実に動いている証拠でもあるのです。裏側では、法務局が関係機関と連携し、必要な調査をじっくりと進めている段階と言えるでしょう。
【不安に感じたら、遠慮なく法務局に連絡を!】
申請した後、「今どうなっているんだろう?」「早く不安から解放されたい」と感じるのは自然なことです。そんなときは、ひとりで抱え込まずに、直接法務局へ連絡して状況を確認してみてください。
具体的に、次のような質問をしてみると良いでしょう。
「今、どのような段階にありますか?」
「今後の想定されるスケジュールはどのくらいですか?」
「補正の可能性はありますか?」
確認することで、少しでも心が落ち着き、安心して待つことができるはずです。
【これから制度の利用を考えている方へ:焦らず、腰を据えて】
このブログを読んでくださっている中には、これから相続土地国庫帰属制度の利用を検討している方もいらっしゃるかもしれません。その際、ぜひ知っておいていただきたいのは、「この制度は申請してから結果が出るまでに時間がかかる」という点です。
申請前の準備ももちろん大切ですが、申請後も慌てず、腰を据えて待つ心構えが必要になります。しかし、それは「放置される」のではなく、「確実に前に進んでいる」時間であることも理解しておきましょう。
相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を手放すための新しい仕組みとして、非常に意義のある制度です。だからこそ、一つひとつの手続きに丁寧な時間がかけられているのです。
現在申請中の方も、これから利用を考えている方も、「自分だけが遅いんじゃないか」と不安になる必要はありません。
このブログでは今後も、申請後の流れや注意点、不安を感じやすい場面について、順を追ってお伝えしていく予定です。少しでも、皆さんが安心して制度と向き合うきっかけになれば幸いです。