

約1年前の財務省資料を、現在の実務から改めて読む
令和7年6月、財務省理財局から「相続土地国庫帰属制度等に係る現状と課題」という資料が公表されました。
この資料は公表から約1年が経過していますが、令和8年7月現在、実際に相続土地国庫帰属制度の相談や申請支援に関わっている立場から見ると、今なお重要な内容が多く含まれています。
むしろ、制度の利用が進み、法務局や財務局の実務が積み重なってきた今だからこそ、改めて確認しておきたい資料だと感じています。
相続土地国庫帰属制度とは、相続などで取得した土地について、一定の条件を満たせば、負担金を納めて国に引き取ってもらえる制度です。
「使う予定のない土地がある」
「遠方にあって管理できない」
「売ることもできず、草刈りだけが負担になっている」
このような方にとっては、大切な選択肢の一つです。
ただし、この制度は、単に
「国が土地を引き取ってくれる便利な制度」
というだけではありません。
国が引き取ったあとも、その土地を管理したり、必要に応じて処分したりする必要があります。
そして、国が管理する土地の数は、すでに大きく増え始めています。
財務省の資料によると、制度開始から2年間で、財務局が管理・処分することになった土地は累計で1,000件に近づいており、今後もさらに増えると考えられています。
国に帰属した土地にも、管理の手間と費用がかかる
国に引き取られた土地は、その後、財務省が管理することになります。
しかし、引き取られた土地のすべてが、すぐに売れたり、活用できたりするわけではありません。
財務省の資料では、傾斜地、道路に接していない土地、樹木に覆われた土地など、活用が難しく、長い期間管理が必要な土地もあるとされています。
これは、私が実務で相談を受けていてもよく感じます。
たとえば、見た目には普通の土地に見えても、
道路にきちんと接しているか。
隣の土地に迷惑をかけていないか。
草木が伸びすぎていないか。
斜面や擁壁に危険がないか。
境界が分かる状態か。
建物やゴミ、資材などが残っていないか。
こうしたことを確認しないと、申請を進めてよい土地かどうかは判断できません。
相続土地国庫帰属制度では、
「申請できるか」だけでなく、国が引き取ったあとに管理できる土地かどうか
がとても大事になります。
国も「引き取った後の負担」を考えている
財務省の資料では、国に帰属した土地について、草刈りや巡回などの管理費用がかかること、また売却などをする場合には、調査や評価、場合によっては測量や地下埋設物の調査などの費用がかかることが示されています。
つまり、土地が国のものになったあとも、管理にはお金と手間がかかります。
そのため、建物がある土地、土壌汚染や地下埋設物がある土地、隣地との境界でもめている土地などは、申請や承認ができない場合があります。
国としても、引き取ったあとに大きな費用や手間がかかる土地については、慎重に判断しているということです。
「土地を手放したい」だけでは進めにくい制度です
相続土地国庫帰属制度は、土地を手放したい方にとって心強い制度です。
しかし、私はこの制度を、最初からすぐにおすすめするものではないと考えています。
まずは、
売却できないか。
隣の方に譲れないか。
地元の方に使ってもらえないか。
家族や親族で管理できないか。
こうした方法を考えることが大切です。
それでも難しい場合に、最後の選択肢として考えるのが相続土地国庫帰属制度です。
この制度を使うには、申請手数料や負担金だけでなく、書類作成、現地確認、境界表示、草木の伐採、建物解体、改善工事などが必要になることがあります。
つまり、
「とりあえず申請してみよう」
という制度ではありません。
本当にこの土地を手放したいのか。
費用と時間がかかっても進めたいのか。
途中で追加の対応が必要になっても受け止められるのか。
申請前に、そこを確認しておくことが大切です。
大切なのは、書類だけでなく「現地を見ること」
相続土地国庫帰属制度の支援で大切なのは、申請書を作ることだけではありません。
現地を見て、土地の状態を確認することが大切です。
草木はどうか。
建物は残っていないか。
境界は分かるか。
斜面や擁壁に問題はないか。
隣の土地に影響はないか。
こうした点を確認しながら、法務局がどこを問題にしそうかを考え、承認に向けて準備していく必要があります。
当事務所では、相続土地国庫帰属制度を、土地を手放すための最終手段として考えています。
だからこそ、最初から申請ありきではなく、
本当にこの制度を使うべき土地なのか。
申請までに何を整える必要があるのか。
承認に向けて、どこが課題になりそうか。
こうした点を確認しながら進めています。
まとめ
約1年前に公表された財務省資料を、現在の実務から改めて読むと、相続土地国庫帰属制度が社会に必要とされている一方で、国が引き取った後の管理・処分も大きな課題になっていることが分かります。
土地を手放したい方にとって、この制度は重要な選択肢です。
ただし、
「国に渡せば、それで全部解決」
という単純なものではありません。
国も、引き取ったあとの管理や処分を考えて審査しています。
そのため、申請する側も、土地の状態をきちんと確認し、必要な準備をしてから進めることが大切です。
売却も難しい。
誰かに譲ることも難しい。
このまま放置することもできない。
そのような場合に、相続土地国庫帰属制度は最後の選択肢になります。
土地を手放したいと思ったときこそ、あわてて申請するのではなく、まずは現地の状態を確認し、本当にこの制度を利用すべきかを考えることが大切です。